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自治会と管理組合が一体化! 歳月を経ても価値を保ち続ける管理・運営の秘訣【前編】

日本で初めて分譲マンションが登場して60年余り。建物や設備の老朽化と居住者の高齢化といった「2つの老い」に直面しているマンションがあるなか、築45年にもかかわらず、市場価値を保ち続けているマンションが京都府伏見にあります。高経年のマンションが歳月を経てなお評価されている理由を、自治会長兼管理組合理事長の田村さん、副理事長の西海さん、書記の洞山さんに取材しました。
前編では、自治会が発行する新聞やサークル活動を中心に、活気を維持するために行ってきた取り組みについてご紹介します。

各種サークル活動

マンションの歴史を語る、自治会発行の手づくり新聞

新聞

第三期マンションブームといわれた1972年。「ファミール伏見」は京都市内初の高層マンションとして、11階建て280戸・3棟構成で誕生しました。近鉄京都線 伏見駅前という好立地ですが、東山・祇園界隈や京都御苑、二条城周辺といった“まちなか”エリアではありません。
そんなファミール伏見が、築45年にしてなおその価値を保ち続けている理由のひとつは、良好なコミュニティにあります。そして、その重要なツールとなっているのが、自治会が毎月発行する『ファミール伏見』新聞です。

 

ファミール伏見新聞の創刊は、マンションの完成から12年が経過した1984年6月。当時は、経済が高度成長から安定成長へと転換していくなかで、住人たちの生活も少しずつ変化し、入居当初の和気あいあいとした人間関係が希薄化しつつあったといいます。そんな状況を危惧した住人が、「いまここで何が起こっていて、どんな人が住んでいるのか、等身大の情報を発信してお互いの理解を深めよう」と提案。これがきっかけとなり、賃借人を含む全居住者で構成される自治会が手書きガリ版で創刊、全戸配布しました。当初は“気の向くままに”というのんびりとしたスタンスで、4年間で8号を発行。その内容は、管理組合理事会だよりにはじまり、各種サークルからのお知らせやイベント情報、入居者の紹介等のほか、「夕暮れにこうもりがやってきた」という日常のささいな話題まで、実に様々でした。
その後しばらく休刊しましたが、1992年6月「ファミール会」という住人グループによって復刊。現在は書記の洞山さんが編集委員長となり、ワードソフトを導入して、毎月1回カラーで発行。今年9月には312号を数えるまでになりました。

 

現在の人気コーナーは、90歳の女性居住者が担当する「私の笑歌」。季節や身のまわりのことを題材に、毎号欠かさず数首詠んでいます。例えばこんな短歌。
松茸の香りほのかに土瓶蒸し 秋しみじみと有りがたき宵
なんとも味わいのある歌ですが、田村さん、西海さん曰く、「はじめはお世辞にも上手いとはいえず、どうなるかと思っていたけど(笑)」「だんだん上手になっていかはる。不思議なもんや」。編集委員長の洞山さんも、「校正段階で急に差し替え要請がある。それが、かなん!(※)」とぼやきながらも実に楽しそうでした。

 

はじまりは雨漏り!? 婦人たちの活動が自主的組織発足のきっかけに

なかよし住人たちの組織活動が始まったのは、入居からわずか2カ月後の1972年6月のことでした。新築の高級マンションであったにもかかわらず、雨漏りや風呂釜のひび割れ、騒音、駐車場不足といったマンションの不備・不具合が次々と出てきたため、婦人たちが団結したのです。当時は管理組合がなかったため、建築施工会社と販売会社に対して、婦人たちが自ら不具合の改善を求めて交渉。1年後に管理組合ができ改善交渉は引き継がれましたが、組合の発足は、住人たちの自主活動なくしてはありえなかったのです。この後、管理組合は自治会と一体化して盤石な管理・運営体制を構築していくのですが、これについては後編でお届けします。

一方、この婦人たちの集会は、趣味と親睦を兼ねたサークル「さつき会(後に「女性の会」へ名称変更)」に発展します。当時は子育て中の若い世代が多く、小さな子供たちがたくさんいたので、さつき会のスポーツ好きなご婦人が中心となって、建物の周りをかけっこさせたり一緒に遊んだりしていたそうです。さつき会に続いて、京都市の図書館から本を借りてきて子供たちに読み聞かせる「なかよし文庫」なども始まりました。

イベント、サークル、高齢者サポート。創意工夫で活気を維持

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現在、マンションの中庭には3本の桜の木があります。これは、30~40年ほど前に、年配者たちのサークルが古紙回収で貯めた資金を基に植樹したもので、春には、この3本の木を囲んで盛大な桜まつりが催されるそうです。

夏の地蔵盆には、敷地内に鎮座するお地蔵様を中心に夏祭りが開催されます。このお祭りには、お年寄りはもちろん、乳幼児から中学3年生までのなかよし会も参加します。現在の居住者だけでなく、孫を連れて帰ってくる第2世代もいて、毎年たくさんの笑顔が咲きほころぶそうです。

また65歳以上が参加する寿会では、京都市の補助金を活用しながら食事会や映画観賞会、研修会など毎月何らかのイベントを開催しています。麻雀、ボウリング、ゴルフ、カラオケ同好会など自治会のサークル活動も盛んです。女性10人ほどのグループは、「お年寄りに外出の機会を」と、認知症予防も兼ねて、毎週月・水・金に管理棟集会室で即席カフェ「ファミール・カフェ輪(りん)」を開店。1杯100円のコーヒー等を振る舞い、介護に頼らない高齢者福祉の取り組みを実践しています。

 

長い歳月のなかで少しずつ変化しながら、マンションのあちらこちらで花開く、ファミール伏見のコミュニティ。その一つひとつの賑わいが、マンション全体の活気につながっているのがよく分かりました。

 

(※)かなん:京都の方言で「いやだ」「困る」の意味。

☆☆☆

 

次回は、管理組合と自治会が一体化した経緯とその活動内容、そして、理事会役員たちが見据えるこれからのファミール伏見についてご紹介します。

乞うご期待!

To Be Continued.

概要(取材年月:2017年07月)
  • 建物名:ファミール伏見
  • 所在地:京都府伏見区
  • 階数 :11階建てなど
  • 総戸数:280戸
  • 竣工年:1972(昭和47)年築
  • 管理形態:全部委託(決定は理事会)
  • 管理会社:三菱地所コミュニティ(株)
  • 総会開催:5月
  • 役員数 :42名
  • 役員任期:1年