- 連載
- 特集
- 2015.01.05掲載
●マンションは二段・多段方式が多い
●事故はマンションで起きる
●誰が操作を行うのか?
●事例1 二段・多段方式での事故
●事例2 エレベーター方式での事故
●事故原因と今後の取り組み
●重大事故を防止するには管理組合の啓発活動が必須
●マンション居住者で共通の認識を
●機械式立体駐車場の大雨・雪対策も大切です!
マンションでもよく見かける機械式立体駐車場では、近年多くの事故やトラブルが発生しています。事故原因や予防策などを考える前に、まず機械式立体駐車場の基礎知識を簡単にご紹介しましょう
◆マンションは二段・多段方式が多い
機械式立体駐車場が初めて日本に誕生したのは、1962年(昭和37年)。当時は自動車の交通量が急速に増え、都心部の渋滞緩和のために日本橋高島屋に設置されたものが最初といわれています。
その後、大都市圏で大型の商業施設等を中心に導入が進み、限られた土地を最大限に活用できる効率的な駐車場として、1980年以降、マンションにおいても急速に普及しました。機械式立体駐車場の設置実績は、累計約54万基(車の収容台数にすると約287万台分・平成25年3月末時点)とのことです。
ひと口に機械式立体駐車場といっても、さまざまな種類がありますが、その構造から大きく7つに分類できます。
機械式立体駐車場の種類
1. 垂直循環方式
2. 多層循環方式
3. 水平循環方式
4. エレベーター方式
5. エレベーター・スライド方式
6. 平面往復方式
7. 二段・多段方式
このうち、1~6までは商業施設などの大型駐車場に用いられることが多く、7の二段・多段方式は比較的小型で、累計設置台数の65%を占めています。さらに二段・多段方式を採用している約8割が、マンションなどの住宅用です。つまり、マンションには小型の二段・多段方式の機械式立体駐車場が多いのです。
◆事故はマンションで起きる
ところで、機械式立体駐車場での事故はどのくらい起こっているのでしょうか。公益社団法人立体駐車場工業会の調べによると、2007年から2014年1月までに、機械式立体駐車場において起きたトラブルや事故は207件あるそうです。
その中には、閉じ込め事故や車の破損のようなものや、人身事故も含まれています。このうち調査した(公社)立体駐車場工業会で発生場所が確認できたものは145件で、その約4割はマンション内での事故です。さらに細かく見ていくと、死亡・重傷に至った重大事故は7年の間に少なくとも26件(うち死亡事故は子どもの3件を含む10件)発生しており、こちらは発生場所がマンションであったケースが5割にものぼります。
では、なぜ機械式立体駐車場の事故はマンション内で起こることが多いのでしょうか。その原因のひとつは、前述した機械式立体駐車場の歴史に関わりがあります。
◆誰が操作を行うのか?
そもそも機械式立体駐車場は、商業施設や一般の公共用につくられたものでした。そのような駐車場では、事前に講習等を受けた専任のオペレーターのみが機械を操作します。一方、マンションでは居住者の専用駐車場として使われるため、利用者自らが操作を行うことがほとんどです。
(公社)立体駐車場工業会が任意に作成した管理基準(国土交通大臣認定)によると、機械式立体駐車場の操作は、「装置の運転について必要な知識を有する専任の操作員」のみが行ってもよい、とされています。ただし、マンションに普及する際に「装置の運転に必要な知識及び非常時の処理方法、ならびに取扱上の注意事項等の教育を十分に受けたものは取扱者とみなし、使用者による自主運転もできる」ということになりました。
しかし、実態はどうでしょうか。マンションに住み、実際に機械式立体駐車場を利用している人ならおわかりかと思いますが、操作を家族の数人、もしくはお客様などに任せたことがある人も多いのではないでしょうか。その上、自分が「教育を十分に受けた」といえる状態かどうかさえ、怪しいという人もいるかもしれません。