- 連載
- 建築家によるリフォーム紹介
- 2010年春号
◆共用部分は見た目の印象が重要!
エントランスホールや共用廊下、外観といった共用部分はマンションの第一印象を決める上で大変重要な部分であり、この第一印象のほとんどは「明るさ」「清潔感」「デザイン性」といった、いわゆる「見た目」で決まります。近年、「デザイナーズマンション」と謳った物件をよく目にしますが、これも理に適った販売戦略であるといえます。マンションの付加価値を上げるにはこの見た目を意識し、入居者のライフスタイル、時代のニーズに合った共用部分のリフォームが有効となります。
マンションも老朽化してくると各所に汚れや破損などが見られるようになり、新築時の明るさや清潔感が失われていくものです。特に、エントランス部分は入居者や来客者などが常に行き来する場所であり、共用部分の中でも見た目を意識したい場所ですが、郵便ポストに汚れや破損が見られるなど、エントランスの美観を悪くしているマンションが多く見られます。エントランスの印象が貧相だと専用部分も貧相かと想像させてしまうので注意したいですね。
エントランスの大掛かりなリフォームが出来ない場合でも、照明器具を交換し陰影のある空間演出をしたり、ソファーや植栽を配置するなどといったセンスの光る空間演出もエントランスのイメージアップとなります。ホテルのロビーに見られるような照明や家具の配置なども参考になるでしょう。
◆バリアフリー改修の必要性
見た目以外の重要なポイントとしては、共用部分のバリアフリー改修があります。新築のマンションであれば当然バリアフリー対応となっていますが、90年代前半以前に建てられたマンションではバリアフリー対応が十分にされていない物件が多くあります。
ハートビル法の改正によりマンションの共用部分にもバリアフリー改修が努力義務として定められてはいますが、修繕費用や居住者間の意見調整など問題点が多く実態としてはあまり改善が進んでいないようです。しかし、これから迎える超高齢化社会にあってバリアフリー改修は避けることの出来ない問題です。入居者が安心して長く暮らすことができるマンションであるためには、段差解消や手摺の設置などといったバリアフリーへの対応は欠かすことが出来ません。
費用面での負担を少なくするには、住宅金融支援機構による「マンション共用部分リフォーム融資」や自治体の行っているバリアフリー工事補助金制度などがあるのでこれらを活用すると良いでしょう。
◆マンションエントランス改修の実例
今回ご紹介する実例は、昭和57年に建てられた築後27年が経過した賃貸マンションにおけるエントランス改修の実例です。
当初、オーナーからの要望としては、古くなったメールボックスの交換とエントランス建具の交換といった簡単なリフォーム内容でした。現地を確認したところエントランスからエレベータまでに80㎝の段差があり、バリアフリー上問題があるのではと指摘しました。現入居者に高齢者は少ないとのことでしたが、今後の入居者の高齢化やベビーカーを利用している入居者もいるとのことからスロープを設けバリアフリー化を図る計画としました。階段の勾配も急であったため段数を一段増やすとともに踏面寸法も広くし昇降をし易くしました。
壁面に取り付けられていたメールボックスは撤去し、メールコーナーを設け、この中にメールボックスと宅配ボックスを設けました。
壁面にずらっと並ぶメールボックスはエントランスの美観を悪くしてしまいますので、メールコーナーを設け、直接見えないようにすることはエントランスの見た目を良くする上で大変有効です。今回の計画では、このメールコーナーを囲う壁に木製のパネルを貼り、上部に間接照明、足元に白玉砂利を敷きこの部分の存在を際立たせ、空間のアクセントとしています。通常はエントランスホールの厄介者であるメールボックスでしたが、ここではエントランスの主役になったかのようです。
◆省エネリフォームでCO²削減
近年、地球温暖化防止が緊急の課題となっている中、住宅の分野においてもその対応が求められています。新築のマンションであれば設計時に対策を講じることが出来ますが、既存のマンションの場合は改修という手段を取らなければなりません。
築年数の古いマンションは大規模修繕の時期を順次迎えることもあり、改修時が省エネルギー化など、CO²の排出削減対策を盛り込む好機であるといえます。この大規模修繕時に外断熱改修を行うことによって建物の外皮を一括して断熱できるため、効率よく建物全体の断熱性を上げることが可能となります。屋上と外壁で外断熱改修を行った場合、1戸当り12%のエネルギー削減率が見込まれるとの試算が出されています。近年、地球温暖化防止が緊急の課題となっている中、住宅の分野においてもその対応が求められています。新築のマンションであれば設計時に対策を講じることが出来ますが、既存のマンションの場合は改修という手段を取らなければなりません。築年数の古いマンションは大規模修繕の時期を順次迎えることもあり、改修時が省エネルギー化など、CO²の排出削減対策を盛り込む好機であるといえます。この大規模修繕時に外断熱改修を行うことによって建物の外皮を一括して断熱できるため、効率よく建物全体の断熱性を上げることが可能となります。屋上と外壁で外断熱改修を行った場合、1戸当り12%のエネルギー削減率が見込まれるとの試算が出されています。
これらの省エネリフォームの実施により、環境負荷の低減や光熱費削減による省コストだけでなく、健康的な住まいの実現や耐久性の向上など様々な効果が期待できるでしょう。
坂野 茂(Shigeru Sakano)
一級建築士 (株)ベル建築研究所 代表取締役