- 連載
- 地域コミュニティシリーズ
- 2010年夏号
◆マンションを子供たちの故郷に
「この辺で悪いことはできないな(笑)」と語るNPO 法人小杉駅周辺エリアマネジメント理事の村山さん。自身はマンション住民ではないが、日頃、マンション住民と一緒になってイベント等を行う武蔵小杉駅のマンション周辺ではちょっとした有名人だ。
NPO 法人小杉駅周辺エリアマネジメントは、平成同年にもともと工場跡地が多かった武蔵小杉駅周辺の開発の決定にともない、それまであった市民部会などを前身として川崎市のまちづくり局のバックアップのもと設立された。
村山さんは、銀行を定年退職後、前身の市民部会のメンバーに誘われたのがきっかけで、NPO 設立メンバーの一人となり、NPO 法人小杉駅周辺エリアマネジメント事務局の運営を担うことになった。
「当時のメンバーの中で私が一番ヒマそうだつたんですよ」と笑う村山さんだが、小杉のまちづくりに対する情熱は人一倍あった。「転勤族だったからこの街のよさがわかった。いろんな地域をみてきたけど交通の便の良さも自然もある。この街をちゃんと人の住める街にしていきたい」以後村山さんは事務局において様々なイベントや広報活動を行っていく。
毎月発行する「月刊エリアマネジメント」はマンション全戸に配布。子供たちがまちの自然と触れ合う「こすぎ子ども探検隊」や子育ての情報交換を行う「パパママパーク」、毎週行う清掃活動などどれも今やマンション住民間の貴重なコミュニケーションの場、コミュニティ形成の場となっている。
また、昨年から始めたエリアマネジメント連絡会議には、複数のマンション管理組合の理事も参加して、地域の防犯活動や防災活動などについて協議を行っており、各マンションの単位を超えた地域活動が実現している。
「エリアマネジメント連絡会議を始めたことで、マンション同士の交流ができたとみなさん言ってくれるようになったんです」
設立当初はまだ、NPO への理解も深まらず、苦労もあったが、マンション住民を対象とした地道な活動が実を結び、NPO があってよかったと言ってくれる人が増えたという。
「この地域のマンションで生まれ育つ子供たちにとっては、ここが故郷になる。そうした子供たちのためにも夏祭りなどいろいろな催しが必要になる。コミュニティを作らなければならない。今のマンションには、図書館やキッズルー ムもある。しかし、設備だけではなかなか人のつながりは生まれないんです。やはり誰かが人と人を結びつける役割を担わなければならない。この小杉駅周辺エリアマネジメントをマンション住民の代表者が運営していくようになって、初めてこのNPO は、本当のスタートラインに立てるのではないかと思う」